「本の家計簿」群ようこ著:『本の旅人』(角川書店)

 前回に続き、『本の旅人』連載中のエッセイからもう一つ。 「グーグーだって猫である」同様、開かずにおけないページです。

 「本の家計簿」にはタイトル通り、著者が毎月購入した本がずらりと列挙されています。ちなみに、四月号では六十二冊、五月号では四十九冊の様々なジャンルの本(古書も洋書も漫画もあります)が並んでいて、それらをながめているだけでも楽しくなります。

 著者のエッセイが面白いのは言うまでもないのですが、他人が買った本を見るのはどうしてこんなに楽しいのでしょう。私は書評やブックガイドなど本についての本や、人の本棚を見るのがかなり好きで、対談やインタヴューでも本に関する部分があればつい熱心に読み、雑誌やテレビに出でいる人のバックに本棚がうつっていれば、つい目を凝らし、本のタイトルを判読することに全力を傾けます。

 そういえば少し前、フジTVの深夜に芸能人が本について語る番組(聞き手は永井美奈子)があって、偶然チャンネルをあわせると、エレファントカシマシの宮本さんが、永井荷風の『断腸亭日乗』や古本屋で?十万円も出して買った江戸の古地図について、頭を掻きむしりながらあつくあつく語っていました。その姿はいまも脳裏に焼きついて離れません。また、LユArc〜en〜Cielのダム好きのKENさんが「笑っていいとも」に出演したとき、真保祐一の『ホワイトアウト』を面 白がっていたのも印象に残っています。なぜか、本について楽しそうに話す人に、とても好感を持ってしまいます。

 そして、人のおすすめ本がついつい気になってあれこれ手を出すのですが、結局、私の読む態勢が整っていない為につまみ読みに終わることが多く、勝手に自己嫌悪に陥っては頭を掻きむしっています。でも当分、この悪癖はなおりそうにありません。

 しかし、本についての自らのアンテナが、絶対的だとは思えるはずもないので、私は少しでも信頼できそうな意見や感想をたよりに本を選ぶしかありません。なぜその本を手に取ったかを問われて、「その本が自分を呼んでいたから」式の、よくわからない答えを見聞きすることが多いのですが、自分の内なる欲求やら感性やら、あやふやなものを拠り所にするよりも、何に影響されたか、たとえ受け売りであっても誰の意見を採用したのかを意識化できている方が、好みや考えを広げたり深めたりしやすく、実はその人の個性が強く現れるのではないかと思います。

 「本の家計簿」を取り上げたのは、著者の『本の旅人』での前回の連載(林芙美子の評伝、『飢え』のタイトルで角川文庫に入っています)がとても面 白かったので、今回も反射的にページを開いたのがきっかけです。著者の同タイプの評伝に、『尾崎翠』(文春新書)があり、こちらもおすすめです。

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