犬日記2001 夏 その2


8月某日 

 朝、明るくなるのが少し遅くなった。
 目が覚めるのも、ちょっとずつ遅くなる。

 起きると、セミの声が響いている。
 急いで散歩に出る。2、3歩行くと、すぐウンコ。
 いつもマークする場所に、ほかの犬のにおいがプンプンする。
 鼻をぎりぎりまで近づけて、においを確かめる。

 めずらしい虫が転がっていた。これも点検だ。
 カリカリとした感じのものが、仰向けになっている。
 ぜんぜん警戒せずに、鼻でツンとつついたら、
 急に体勢を戻してぶつかってきた。
 虫の硬い羽が、鼻におもいきり当たった。
 「セミだよ」
 なんだかわからないけど、とにかく逃げた。

 

 

8月某日 

 今日も、お取り寄せが届いた。
 いい匂い。
 「なし」だ。

 くれくれくれくれくれくれ。
 おいしいものは、届いたらすぐ食べる。
 あまくて、みずみずしてて、うーもっとくれ。

 口元に飛びついたら、また叱られた。
 でも、しっぽも振った。
 毎朝、おいしいものが来て、みんなで食べて、さわいで、
 結局叱られて終わる。
 あしたは、なにが来るだろう。

 

 

8月某日 

 久しぶりに雨が降り続いている。
 台風が近づいている。
 テレビはずっと台風情報。
 雨が降っては大騒ぎ。
 雨が降らなくても大騒ぎ。
 
 雨が降っても散歩に行く。
 小降りのすきにピャッと出る。
 風が吹いても走ってくる。
 いつもの場所でウンコをする。
 あしたになればまた晴れだ。

 

8月某日 

 夏休みが終わって、遊び相手がひとり減った。
 家の中が急に静かになった。

 ウチの家族構成、男1、女1、犬1。
 男は犬主、遊び相手。女は世話係。どちらも生きていくために欠かせない。
 昼間は世話係とふたりきり。
 遊ぶこともあるけど、散歩以外はほとんど膝の中で眠って過ごす。
 夜、全力で遊ぶために、十分に睡眠をとる。

 遊び相手が帰ってきたときは、ダッシュで玄関に飛んで行く。
 全身でお迎えをする。おみやげがあれば、真っ先にとびつく。
 でも、遊び相手が出かけるときは、つまらないから無視をする。
 今朝も知らん顔してやった。
 行ってしまってから、閉まったドアをじっと見た。
 「すぐ帰ってくるよ」と言ったときは、こんな気分にはならないのに。
 とりあえず、散歩に行くまで昼寝した。

 

 

 

8月某日 

 雨が降ると、道にミミズがたくさん這い出してくる。
 雨が上がると、ミミズはそのまま干からびる。
 雨が降った次の日の散歩は、楽しみがひとつ増える。
 干からびたミミズに、からだを擦りつけるのが好きなのだ。

 畑や芝生沿いの道には、枯れ葉やゴミと同じくらい、
 そこここにミミズが落ちている。
 どういうわけか、ミミズのにおいは見過ごすことができない。
 反射的にひっくり返ってスリスリしてしまう。
 特に首筋に擦りつけるのがたまらない。

 今朝は久しぶりの雨上がりの散歩で、スリスリを楽しんだ。
 あんまりしつこくやると嫌がられるけど、たまになら大目にみてもらえる。
 でも、動いているミミズにスリスリしようとしたら、
 さすがにリードをピシリと引かれてしまった。

 

 

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